高齢者と過ごした4年間。「まごとも」を終えて、もう一度会社をつくりました。

高齢者と過ごした4年間の振り返り。
「まごとも」を終えて、もう一度会社をつくりました。
次は「介護を支える人」を支えます。

「まごとも」から株式会社ケアバディへ。
全然違う事業に見える2つが、自分の中ではどうつながっているのか。

2026年、約4年間続けてきた「まごとも」を終了しました。

事業を畳むことを決めたときには、「まごともを廃業します」という動画も公開し、終了を決めた理由や、これまで関わってくださった方々への思いをお話ししました。

▶「まごともを廃業します」動画を見る

そして、2026年9月に、僕はもう一度会社をつくりました。

会社の名前は、株式会社ケアバディです。
名前の通り、介護職員の方々の「相棒」となり、訪問介護事業所の電話対応やシフト調整、関係者への連絡、書類作成といった管理・調整業務を、AIで減らしていく会社です。

まごともを知ってくださっていた方からすると、「高齢者と若者をつなぐサービスをやっていたのに、なぜ今度は介護×AIなんだろう」と感じるかもしれません。

表面だけを見ると、かなり違う事業です。
でも、自分の中では、「まごともを4年間やったからこそ今これをやっている!」という感覚があります。

まごともは「支援する人」というより、名前の通り“友達”に近かった

少し意外かもしれませんが、まごともを始めた一番最初の目的は、高齢者支援そのものではありませんでした。

当時の僕が考えていたのは、若い世代が、自分とは違う世代や人生を生きてきた人の価値観に触れられる機会をつくりたい、ということでした。

その中で高齢者と出会い、シニア領域に入っていったのは、ある意味では縁のようなものでした。
介護業界に入ろうと最初から決めていたわけでもありません。
ちなみに僕は4月28日生まれなのですが、この日は「シニアの日」と呼べる日で、今振り返ると不思議な縁を感じています。

ただ、その偶然から始まった事業を4年間続けたことで、自分でも想像していなかったくらい、高齢者の日常の深いところまで関わることになりました。

まごともでは、若者が高齢者の自宅を訪れ、会話をしたり、一緒に散歩や買い物に行ったり、スマートフォンの使い方を一緒に考えたりしていました。
何度も会い、家に上がり、家族の話を聞き、何気ない日常まで共有する。
「支援する人」というより、名前の通り、孫や友達に近い距離感でした。

だからこそ、外から高齢者市場を眺めているだけでは分からないことが、少しずつ見えるようになりました。

高齢者の生活を見ていくと、「支える側」も見えてきた

高齢者の日常に関わるほど、その生活が本人だけで成り立っているわけではないことも分かってきました。

介護が必要な人にも、家族がいて、介護の手続きや支援をするケアマネジャーがいて、ヘルパーがいます。

まごともを始めたときには、高齢者の暮らしの裏側にある介護の仕組みまで深く考えていたわけではありません。
でも、4年間その生活の近くにいたからこそ、少しずつ「支えている人たち」の存在と、その大変さまで見えるようになりました。

そして次の事業を考える中で、特に気になったのが、ヘルパーが利用者の自宅を訪問して支援する「訪問介護」でした。

訪問介護の有効求人倍率は14.74倍。「採用だけ」で解決できるのか

日本全体でも人手不足は進んでおり、2024年度平均の有効求人倍率は1.25倍です。

介護業界は、以前から深刻な人手不足が大きな課題と言われています。

その状況は数字にも表れていて、施設介護員の有効求人倍率は3.28倍。
一般の水準と比べても、すでに人材を集めることが難しい業界だと分かります。

しかし、その中でも群を抜いているのが訪問介護です。

訪問介護職の有効求人倍率は、14.74倍。

一般の有効求人倍率1.25倍と比べると、10倍を超える水準です。

ここまで人材獲得が難しい状況で、

「もっと採用を頑張りましょう」だけで、本当に解決できるんだろうか。

そう考えるようになりました。

ただ一方で、現場の管理者やサービス提供責任者は、利用者に向き合う仕事以外にも、電話対応、欠勤時のシフト調整、関係者への連絡、書類作成など、多くの管理・調整業務を抱えています。

人が足りないのに、人でなくてもできる仕事にも人の時間が使われている。

訪問介護は、利用者とのコミュニケーションや身体介助など、人と向き合う仕事が中心です。
日常的にパソコンを使うことを前提とした職種ではないため、電話や書類、システム入力などの事務業務を負担に感じる人もいます。

実際、訪問介護事業所で事務を担う方から、「私はパソコン事務は好きじゃない。利用者さんの支援をしたい。でも人がいないし、ベテランだからやっている」と聞いたことがあります。

それなら、人を増やすことと同時に、「人がやる仕事そのものを減らす」という方法も必要なんじゃないか。
そう考えたことが、ケアバディにつながりました。

※出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和7年3月分及び令和6年度分)」/「介護職員・訪問介護員の有効求人倍率」

そこで、AIで「人がやらなくてもいい仕事」を減らす

株式会社ケアバディでは、訪問介護事業所の管理・調整業務をAIで自動化するサービスをつくっています。

電話を受ける。欠勤が出たら代わりに入れる職員を探す。必要な人に連絡する。シフトを変更する。書類をつくる。

AIが「こうしたらどうですか」と提案するだけではなく、可能な業務は実際に完了するところまで任せられる状態を目指しています。

ただ、介護そのものをAIに置き換えたいわけではありません。

人にしかできない介護は、人にやってほしい。
だから、その周りにある「人じゃなくてもできる仕事」を減らしたい。

利用者と話すことや、表情の変化に気づくこと、不安なときにそばにいること。
そうした人が担う価値のある時間を残すために、AIを使いたいと思っています。

なぜ、自分がここでやるのか

まごともとケアバディは、サービスとしてはかなり違います。
まごともは若者と高齢者が出会うサービスで、ケアバディは訪問介護事業所向けのAIサービスです。

介護を目指してここまで一直線に来たわけではありません。
高齢者との出会いも、介護との出会いも、自分にとっては縁に近いものでした。

ただ、その縁の中で、20代の自分なりに高齢者の日常や、その周りにある介護の現場を近くで見る経験ができました。
一方で今は、AIを使ったプロダクトや仕組みを自分たちでつくり、実際の業務に落とし込むこともできます。

少なくとも自分がこれまで出会ってきた中では、介護現場を知りながら、AIやアプリまで自分でつくる人は多くありませんでした。
逆に、一般的なIT企業からすると、介護現場の細かな業務や制度は外から見えにくい。

その間にいることが、今の自分の強みなんじゃないかと思いました。

だから、「ここなら今の自分が価値を出せる」と思った。
それが、訪問介護でケアバディを始めた理由です。

もちろん、自分たちだけで介護業界を変えられるとは思っていません。
現場を一番よく知る介護事業所の方々と、自分たちの技術を掛け合わせて、一緒につくっていきたいと思っています。

株式会社ケアバディの理念は、「自由を掴んで、その先へ。」です。

AIで効率化すること自体をゴールにするのではなく、人がやらなくてもいい仕事を減らし、その分、自分にとって価値のあることに時間を使えるようにする。
まずは訪問介護から、その実現に挑戦します。

実は、このケアバディを通して、もう一つ考えているテーマがあります。
この話は少し長くなるので、また別の記事で書こうと思います。

まごともで得た学びも、これから発信していきます

まごともという事業は終了しましたが、そこで得た経験まで終わらせるつもりはありません。

学生の状態から0→1で事業を立ち上げたこと。
高齢者の日常に入って初めて分かったこと。うまくいったこと。失敗したこと。
そして、会社をつくって畳むところまで経験して分かったこと。

こうした4年間の学びと、株式会社ケアバディをまた0からつくっていく過程は、これからSNSでもできるだけそのまま発信していくつもりです。

また、「まごとも」を立ち上げてから終了するまでの経験は、noteにも一度まとめました。
シニアビジネスに興味がある方や、「まごともって結局どんな事業だったんだろう」と思ってくださった方には、ぜひ読んでもらえたら嬉しいです。

まごともを応援してくださっていた皆さんにとって、ケアバディは直接使うサービスではないかもしれません。

それでも、「あの学生が、次はこんなことを始めたんだ」くらいの気持ちで、ときどき次の挑戦も覗いてもらえたら嬉しいです。

一度会社を畳みましたが、そこで終わるつもりはありませんでした。
まごともで得た4年間の経験も持って、今度は株式会社ケアバディをまた0からつくっていきます。

また新しく、やっていきます。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。ではまた!

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この記事を書いた人

株式会社ケアバディ代表取締役。
京都大学大学院在学中に株式会社whickerを創業し、学生が高齢者宅を訪問する世代間交流サービス「まごとも」を約4年間運営。
現在は訪問介護事業所向けのAI業務支援サービス「ケアバディ」の開発・提供に取り組む。

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