2026年10月1日から、事業主にはカスタマーハラスメント(カスハラ)の防止措置が義務化されています。方針を決めて職員に伝え、相談を受ける体制を整えることなどが、事業所に求められるようになりました。
とはいえ、訪問介護の現場で実際に起きるのは、たとえばこんな場面です。訪問を終えたヘルパーから、事業所に電話が入ります。「ご家族に強い口調で責められて、正直怖かったです。次も一人で行かないといけませんか」。
まずは本人を落ち着かせたい。でも、その利用者の次の訪問は明日の朝に入っている。生活を支えるサービスを、急に止めるわけにもいかない。誰が話を聞き、何を記録し、次の訪問をどうするか。管理者の頭の中に、決めることが一気に押し寄せます。
しかも訪問介護では、職員は一人で利用者宅へ行き、管理者もその時間に訪問へ出ていることがあります。方針の文書があっても、こうした場面で「誰が動くか」まで決まっていないと、対応は担当者や管理者一人の頑張りに頼りがちになります。
だからこそ、相談を受ける人、安全を確保する手順、事実を残す方法を、普段の訪問の動きに落とし込んでおくことが大切です。
ここでは、厚生労働省の資料をもとに、管理者が事業所の体制を確認するための考え方と、初動・記録のひな形を紹介します。
まず「相談を受けたら、誰が動くか」を決める
必要な措置には、方針の周知、相談体制、事実確認と被害者への配慮、再発防止、悪質な言動への対処体制、プライバシーの保護などがあります。相談したことを理由とする不利益な取扱いをしないことも、職員へ伝える必要があります。

訪問先では、管理者と職員が同じ場所にいるとは限りません。相談先を決めるときは、「管理者へ報告」で止めず、不在時の代わりまで確認すると動きやすくなります。
| 決めること | 事業所で確認する内容 |
|---|---|
| 最初の連絡先 | 通常の相談先と、訪問中にすぐ連絡する先 |
| つながらないときの連絡先 | 管理者の訪問中・休暇中にも対応を引き取る人 |
| 外部へ相談する担当 | ケアマネジャー、市町村・保険者、必要に応じた専門家等との調整を担う人 |
| 職員への返答 | 受け付けたこと、当面の対応、次に連絡する時点を伝える人 |
これは体制を具体化するための例です。法令上の措置が、この表だけで全てそろうという意味ではありません。自事業所の方針・相談体制・研修等を、厚労省の義務化の案内と照合してください。
怖い思いをした職員には、安全を確かめてから事実を聞く
最初に確認するのは、その職員が今、安全な場所にいるかです。危険が続く場面で、詳しい報告を先に求めると、職員をその場にとどめてしまうおそれがあります。
事業所の手順を作る際は、次のような順で、職員と管理者の役割を確認しておくとよいでしょう。
相談を受けたときの初動の例
1. 職員が今いる場所と、安全が確保できているかを確認する。
2. 身体への危険がある場合は、現場を離れることや警察・救急への連絡など、安全確保を優先する。
3. 利用者に直ちに必要な支援があるかも確認し、管理者等が関係者と対応を調整する。
4. 安全を確保した後に、起きたこと、体調、希望する配慮を聞く。
5. 次の訪問までの対応と、職員へ返答する担当を決める。
これは実務を話し合うためのひな形です。個別の場面に一律の対応を当てはめず、危険性、利用者の状況、支援の必要性に応じて、事業所内外で判断します。
相談を受けた時点で「それはカスハラか」と結論を急ぐ必要はありません。職員の安全と負担を確かめることと、事実や背景を調べることを、それぞれ進めます。
記録は「起きたこと」と「判断」を分けて残す
記録には、「ひどい利用者だった」という評価だけでなく、いつ、どこで、何があったかを残します。同じ出来事でも、本人が直接見聞きしたこと、他の人から聞いたこと、管理者の判断を分けると、その後の相談で確認しやすくなります。
相談・対応を残すメモの例
発生した日時・場所:
相談を受けた日時と担当者:
職員が直接見聞きした言動:
他の人から聞いた内容と、その情報源:
職員と利用者の安全・体調への影響:
その場で取った対応:
職員が希望している配慮:
今後、確認する事実・相談する相手:
次回訪問までの対応・判断した人:
職員へ返答する担当と時点:
上のメモは記事独自の例で、公的な指定様式ではありません。厚労省の介護現場向け資料には相談シート等もあるため、既存の様式が事業所に合えば活用できます。
記録は、対応に必要な人が確認できる場所で管理します。職員の相談内容や利用者の個人情報が関係のない人の目に触れないよう、誰が記録を見られるか(共有範囲)も決めておきます。
利用者への支援をどう続けるかは、組織で判断する
苦情の全てがカスハラに当たるわけではありません。サービスの改善を求める声や、障害に関する合理的配慮の申し出も、内容を丁寧に確かめる必要があります。

認知症等の状態、環境、説明の行き違いなど、言動の背景を確認することと、職員の安全を守ることは、両方必要です。担当職員だけに判断と対応を背負わせず、管理者が事実を整理し、必要な関係者と対応を考えます。
ハラスメントがあったことから、直ちに契約解除やサービス提供拒否の「正当な理由」が成立するとは限りません。厚労省は、提供が困難と判断した場合も、他事業所の紹介等、利用者に必要な支援に支障が生じないよう必要な措置を取ることに留意を求めています。
当面の安全確保と、サービスをどう継続するかという判断は、分けて考えます。契約や提供中止に関わる判断は、市町村・保険者や必要な専門家とも相談し、個別の事情を確認してください。
次の訪問までに、連絡先と対応を一度読み合わせる
まずは、職員から相談が来た場面を一つ想定し、最初の連絡先、不在時の連絡先、記録する場所、次回訪問を判断する人を読み合わせてみてください。
「電話に出られないときはどうするか」「相談した職員へ誰が返答するか」が決まるだけでも、文書の方針を実際の動きへ近づけられます。運用した後は、連絡がつながったか、職員へ対応が伝わったか、記録が次の判断に使えたかを確かめて、手順を直していきます。
「怖かった」の電話から次の訪問まで、ケアバディでつなぐ
ここまで読んで、「連絡を受けて、記録して、次の訪問を決めて……これを訪問の合間に管理者一人で回すのは大変だ」と感じた方もいるかもしれません。
ケアバディは、訪問介護の事業所向けのAI業務支援サービスです。この記事の場面に当てはめると、次のように使えます。
| 場面 | ケアバディでできること |
|---|---|
| 管理者が訪問中で、電話に出られない | AIが電話を受け、内容を文字起こし・要約して、管理者の画面のタスクに出します。録音も聞き返せます |
| 「誰が引き取ったか」が分からなくなる | 受けた電話ごとに対応メモを残し、対応が済んだら「完了」にできます。事業所の誰が見ても、どこまで進んでいるかが分かります |
| 記録が記憶頼みになる | ご家族やヘルパーからの電話は、要約と文字起こしが残ります。記録の節で紹介した「起きたこと」を書くときの材料になります |
| 次の担当者に、決めたことが伝わっていない | 申し送りを、次に訪問するヘルパーのスマートフォンへ送れます。アプリは、未確認の申し送りを確かめてから訪問を始める作りです |
| 次の訪問の担当を替えたい | シフト表の上で、担当ヘルパーの差し替えや入れ替えができます |
職員の安全を守ると決めても、連絡を受け、記録し、次の担当へ伝える手間が重いと、対応は後回しになりがちです。ケアバディは、その「つなぐ」部分の手間を引き受けます。
なお、カスハラに当たるかどうか、契約やサービスをどうするかを決めるのは人です。ケアバディは判断のための情報をそろえ、決めたことを現場へ届けるところを支えます。



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