少子高齢化が進む現代において、学生と高齢者の世代間交流の場はどんどん少なくなり、非常に貴重なものとなっています。
学生と高齢者の世代間交流を活発に行うことで、高齢者のみなさんの健康に良い影響があることが示唆されています。
しかし、世代間交流を通してメリットを得られるのは高齢者のみなさんだけではありません。
学生もまた高齢者のみなさんとの交流を通してさまざまなことを学ぶのです。
そこで今回は、大阪市立大学(現 大阪公立大学)の論文『老人ホームでのレクリエーションを通して看護学生が学んだ老年者に対する気づき』を引用して、高齢者とのレクリエーション活動を通して看護学生がどのようなことを学んだのか、ご紹介していきます!
ぜひ最後までご覧ください!
学生との世代間交流で高齢者にはどのような影響がある?

学生が高齢者のみなさんとの世代間交流を通して学んだことをご紹介する前に、学生との交流は高齢者のみなさんに対してどのような影響があるのでしょうか。
先ほども少しご紹介しましたが、学生との世代間交流によって、高齢者のみなさんの健康に好影響がることが示唆されています!
八戸大学の高齢者と大学生のレクリエーション活動による交流では、以下のような結果が得られています!
学生がレクリエーション活動を開始してからの具体的な高齢者の経過として、自宅に引きこもりがちだったAさんは、デイサービスに通い始めてから明るくなり、家族との関係も良くなり、第 1 回目の学生の訪問をとても喜び、第 2 回訪問時には学生に何かお礼をしたいと施設職員に申し出て、自ら菓子店に足を運び学生のためにクッキーを準備してくれたそうです!
また、ゲームが終わり学生が退出する際は、得意のハーモニカを演奏し、名残惜しそうに学生を送ってくれたとあります!
さらに、消化管の疾患を持つ B さんは食欲が落ちてきていたそうですが、第 1 回目の訪問をとても楽しんでくれ、訪問後の数日間は食欲が出て食べられるようになったといいます!
このように、学生との世代間交流は、高齢者のみなさんの健康に非常に良い影響があるとされています!
研究の目標・目的

この研究の対象となったO看護短期大学では、核家族化が進む中、学生の多くが高齢者との生活経験が少なく、老年者理解が難しくなっていることを問題視し、レクリエーション活動を高齢者福祉と看護学生教育に取り入れるよう検討してきたといいます。
その教育課程において、レクリエーションを通して看護学生が老年者に対してどのような気づきを得ているかは、先行研究で具体的に明らかにされていないため、この研究では、看護学生の「気づき」を「看護学生が看護学実習において自身の感情や思考を自覚し、記述したもの」と定義し、高齢者とのレクリエーションで学生がどのようなことを学ぶのかについて調査しました。
調査方法―レクリエーションの内容

調査・レクリエーションの内容
調査の対象となった学生は、レクリエーション活動に参加したO看護短期大学の学生76人で、そのうち16名からアンケートの回答を回収し、分析の対象となりました。
レクリエーション活動の内容は、ちぎり絵、歌の合唱、はり絵、クイズ、風船運び、借り物競争、ボーリングの7つで、静と動を組み合わせたものになるように設定されています。
施設側の参加者は約30名であったとのことです。
学生に求めたアンケート内容
学生側に回答をもとめたアンケートの内容は、回答した学生のプロフィールに加え、レクリエーション活動を通して老年者のADL面や認識およびコミュニケーションに関することを、計画時に考えていたこと、実施時に気付いたこと、実施後の記録時に気付いたことや反省の3点についての振り返りという形式で自由記載の記述を求めたものとなっています。
ADLとは、日常生活動作(Activities of Daily Living)のことで、日常生活を送るために最低限必要な日常的な動作で、具体的には「起居動作・移乗・移動・食事・更衣・排泄・入浴・整容」動作を表します。
なお、記録時とは実習終了後1週間までに記録を提出する期間を設けており、それまでの時期を示しています。
アンケートの結果は、看護教育に携わる教員2名により分類・分析されました。
研究の結果
レクリエーション活動前の学生の気づき

引用:中岡、上西『老人ホームでのレクリエーションを通して看護学生が学んだ老年者に対する気づき』
レクリエーション活動前の学生の気づきは、身体面、認識面、精神・心理面の3つのカテゴリーに分類できました。
<ADLレベル>に関する内容が10名、ついで、<転倒への注意>が7名、<簡単な動作への配慮>が4名、<身体負荷への配慮>及び<聴力低下への配慮>が3名でした。
<ADLレベル>の具体的な内容を示すと、「ADLは様々だと思っていた」という個人差について(4名)、「全体的にADLが困難な方が多いと考えていた」という低いADLを予想(4名)、「ほぼ自立している」という自立したADLを予想(3名)、また、「想像がつかなかった」という想像できない(3名)という4つの内容が示されました。
<転倒への注意>では、「老人特有のすり足歩行により転倒の危険がある」、「筋力低下のため転倒しやすいので歩く速度に注意する」という内容が示されました。<簡単な動作への配慮>は、
「はり絵は折り紙を貼るだけの簡単なものとした」というように、レクリエーション内容に応じて学生が前もって補助的に準備しておく内容を示していました。
<聴力低下への配慮>は、聴力の低下に伴い「大きな声ではっきりとした説明が必要だと考えていた」という内容でした。
次に、認識面では、<理解力>に4名、<理解力への配慮>に2名、<痴呆>、<発想力>、<デモンストレーションの必要性>、<誘導の必要性>について各1名、認識面を考慮していなかった者も1名見られました。
<理解力>に関しては、「認識するのに時間がかかる」という老年者の理解力の低下を示すもの(2名)と、「ボーリングなら皆が知っていると思った」というゲーム内容の理解力(2名)を考慮しているものでした。
精神・心理面に関しては、<全員参加の気遣い>に4名、<老年者の興味>に2名、<競争心による配慮>に1名でした。
具体的に、<全員参加への気遣い>は、「老年者全員が楽しめるよう」にという内容でした。
レクリエーション活動中の学生の気づき

引用:中岡、上西『老人ホームでのレクリエーションを通して看護学生が学んだ老年者に対する気づき』
レクリエーション活動中の学生の気付きに関しても、レクリエーション活動前の気づきと同様、身体面、認識面、精神・心理面の3つのカテゴリーに分類することができました。
身体面では、<具体的なADL>が9名と多く、ついで<具体的な補助的援助>が8名、<ADLレベル>が6名、<転倒への注意>が4名、<聴力低下への配慮>が3名、<身体負荷への配慮>、<反射運動>、<老年者のペースの尊重>が各1名でした。
<具体的なADL>では、「歩けていても椅子から立ち上がるのに時間がかかる」、「歩行するスピードが予想以上に遅い」などの内容でした。
また、「腕を挙げるのが困難な人がいた」、「手指の拘縮がある」という具体的な身体の可動域に対する記述も見られました。
<具体的な補助的手段としての援助>は、「ピンを近づけて少しでも倒せるようにした」、「座ったままでボールを投げてもらう」という内容でした。
では、「ADLのレベルに個人差が大きいと思った」というADLの個人差(3名)、「意外とADLレベルは高い」、「思った以上にADLの障害はなかった」という予想との差(3名)を示していました。
<転倒への注意>では、「他の方とぶつかって怪我などされないように留意した」という内容でした。
また新たに<反射運動>に関するものが示されました。
認識面では、<誘導の必要性>に3名、<理解力>に2名、<デモンストレーションの必要性>に1名、<理解力への配慮>に1名でした。
また、<その他>として、「説明係り任せであった」という無関心さを示すものや、「実施している最中に次々に新しい人が参加してこられたので説明や声かけが必要であった」という内容が示されました。
<誘導の必要性>は、具体的には「一つ一つ動作毎に次にやることを説明した」という内容であり、<デモンストレーションの必要性>は、「ゲームをする動作の説明を実際に見本をやって説明した」という実際にレクリエーション中に実施した内容でした。
<理解力>は、「分かっている人と全く分かってない人もいた」という認識力の個人差を示しました。
<理解力への配慮>は、より分かりやすく細かい説明の必要性を示していました。
精神・心理面では、「競争ということで急がれる」という<ゲームの心理>によるもの、「レクリエーションを楽しんでもらいたい」という<老年者の楽しみ>を気遣う内容をそれぞれ1名が記述していました。
レクリエーション活動後の学生の気づき

引用:中岡、上西『老人ホームでのレクリエーションを通して看護学生が学んだ老年者に対する気づき』
レクリエーション活動後の学生の気づきは、レクリエーション前・中の身体、認識及び精神・心理面の3つのカテゴリーに加えて、社会面が含まれました。
身体面では、<ADLの把握不足>、<転倒への注意>に各3名が、<具体的なADL>、<ADLレベル>、<具体的な補助的手段としての援助>に各1名でした。
<ADLの把握不足>については、「レクリエーションの前からADLをみなければならなかった」、「動ける範囲がどのくらいなのかを確認していなかった」という反省の内容でした。
<転倒への注意>は、「今思えば転倒事故などがなかったのは幸運だったのかもしれない」という反省に伴う振り返りでした。
<具体的なADL>は、「中には腰の大きく曲がって歩くことに時間がかかる人がいた」、<ADLレベル>は「ADL障害の程度に大きな差があった」という個人差への気づき、<具体的な補助的援助>は「ポールを投げる位置、座ってもらう場所をもう少し考えるべきであった」という反省がありました。
認識面は、<理解力>に5名、<デモンストレーションの必要性>に3名、<痴呆>に1名でした。
<理解力>では、「個人個人の理解度が違うので」といった理解力の個人差を示していました。
精神・心理面では、<自尊心>についてが1名、<さみしさへの憶測>が1名でした。
<自尊心>では、字を読めないこととの関連での気づき、<さみしさへの憶測>では、「老年者の明るさの裏にはつとめてそのように振舞っているのではないかと感じるところあった」という内容がありました。
社会面については、<老人ホーム>について1名が、「入所者の高齢化とそれに伴う問題がある」という内容を示しました。
学生は高齢者の生活について学ぶことができる

以上に見てきた通り、学生は高齢者とのレクリエーション活動を通して、高齢者の生活について学んでいることがわかります。
今回ご紹介した記事では、看護学生によるレクリエーション活動であったため、学生が学んだことも専門的な内容が多くなっていました。
しかし、看護学生以外の学生であっても、高齢者の生活について肌で触れることができ、どのような苦労があるのか、自分たちの生活とどのような違いがあるのかについて考えるきっかけになります。
また、このように高齢者の生活について知るきっかけができれば、高齢者福祉について学生が興味を持つきっかけとなり、介護業界の人手不足の緩和の一助になる可能性があり、高齢者と学生との世代間交流は非常に意義のある活動であるといえます。
実習で得た気づきを次に生かすには、記録を振り返り、現場の人と話し合うことが大切です。
在宅介護を支える人たちの、相棒でいたい
実習で学ぶ高齢者の暮らしに、毎日向き合っている仕事の一つが訪問介護です。ヘルパーさんが家を訪ね、その人に合わせて暮らしを手伝っています。
このブログを運営しているケアバディは、そうした訪問介護の現場で働く人の「相棒」になるAIサービスを作っています。事業所にかかってくる電話の受付や、急な欠勤のときの代わりの人探し、計画書などの書類づくりをAIで手伝います。
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